国会質問データ

198-衆-国土交通委員会(2019/5/15)

[国会質問データ]2019/06/04 更新

保険会社に請求可能

船舶油濁賠償法改正案 清水氏が質問

衆院国交委

写真

(写真)質問する清水忠史議員=15日、衆院国交委

 日本共産党の清水忠史議員は15日の衆院国土交通委員会で、船舶油濁損害賠償保障法の一部改正案についてただしました。

 同法は、燃料油汚染損害の民事責任条約と難破物除去ナイロビ条約を締結するために必要な国内法の整備を行うものです。これまでは、海難事故で流出した油や難破物の処理費用について、船舶所有者に瑕疵(かし)があり、保険金が支払われない場合、地方公共団体が費用を肩代わりしていました。改正案では、被害者が直接保険会社に費用を請求することが可能です。

 燃料油汚染損害の民事責任条約は2008年発効、難破物除去ナイロビ条約は15年に発効しています。清水氏は、日本は四方を海に囲まれた海洋立国であり、必要な条約は様子見ではなく率先して締結し、周りの国々に批准を呼びかけるような積極性が求められていると指摘しました。(赤旗2019/5/21)

20190515資料

議事録

○清水委員 日本共産党の清水忠史です。
 船舶油濁損害賠償保障法、いわゆる油賠法の一部改正案について質問いたします。
 本改正案は、燃料油汚染損害の民事責任条約、それと難破物除去ナイロビ条約、この二つの国際条約を締結するために必要な国内法の整備という位置づけになっております。
 海難事故というのは本当にふえておりまして、例えば油による海洋汚染、さらには船舶の沈没や座礁、こういうことがふえている中で、地方公共団体や漁業関係者の方々の被害を最小限にとどめるということでは必要な改正だというふうに考えております。
 まず、きょうは、この改正に至る経過や実情につきまして、幾つかただしていきたいというふうに思っております。
 最初に確認したいんですが、実はこの油賠法については二〇〇四年に一部改正されておりまして、百トン以上の外航船舶に保険契約を義務づけるということが行われました。当時の法改正は、今私が述べました二つの国際条約、燃料油条約そして難破物除去条約、この二つの条約締結に基づいて行われたものだったのか、あるいはそうでなかったのか、この点を最初に確認させてください。
○水嶋政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国では、船舶から排出された燃料油による汚染損害や座礁船等の撤去費用の賠償が適切に行われるよう、二〇〇四年に油賠法を改正し、一定の外航船舶に対して保険の加入の義務づけ等を措置してまいりました。
 これは、二〇〇二年に茨城県日立港に乗り上げた北朝鮮籍船の貨物船チルソン号による油の流出及び船体の放置が当時社会問題となったことなどから、我が国独自の措置を講じたものでございます。
 この当時、我が国は燃料油汚染損害の民事責任条約をまだ締結しておりませんし、また、難破物除去ナイロビ条約についてはまだ策定をされておりませんでした。したがいまして、これらの措置は、委員御認識のとおり、両条約に基づくものではなく、我が国独自措置として実施をしたものでございます。
○清水委員 確認できました。
 それでは、またこれも改めて確認なんですけれども、今回の燃料油条約と難破物除去条約、この二つの条約があって初めて、いわゆる被害者がいわゆる船主ではなく直接保険会社に損害賠償請求することが可能になるということでよろしいでしょうか。
○水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。
 現行の制度におきましては、燃料油による汚染損害及び難破物除去等の費用による損害について、船舶所有者による保険契約違反を理由として保険会社が免責を主張した場合、被害者から保険会社に対して直接請求することができず、保険金が支払われない事例が発生をしておりました。
 今般、燃料油汚染損害の民事責任条約及び難破物除去ナイロビ条約に加入し、また、油賠法の改正を行うことにより、これらの損害につきまして、被害者が直接保険会社に対して損害賠償額の支払いを請求できることとなります。
○清水委員 つまり、船舶所有者に、保険契約の内容に瑕疵がある場合、保険がおりないだとか、あるいは船舶所有者が失踪して、その責任が問えずに、結局、被害の損害金を補填してもらえない、こういうことから、直接被害者が、例えば地方公共団体だとか漁業関係者が船舶所有者が契約している保険会社に直接請求することが、この本改正案とそして二つの国際条約に批准することによって可能となるということでありますね。
 それでは、あわせて伺いたいんですが、今回の法改正のもとになった二つの事故、青森県深浦沖でのカンボジア船籍貨物船アンファン八号の事故、それから兵庫県淡路島でのタイ籍台船ネプチューン号の事故の概要について説明いただけるでしょうか。
○水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。
 まず、アンファン八号の座礁及び燃料油汚染事故についてでございますけれども、二〇一三年の三月に、この船舶が青森県深浦町の海岸で座礁いたしまして、燃料油が流出したものでございます。
 船舶所有者が青森県からの座礁船撤去命令や油防除要請に従わず、船体等が放置されたままになっておりましたため、二〇一五年の八月までに青森県の費用負担で座礁船の撤去や油防除を実施されたということでございます。この際、座礁船撤去、油防除に要した費用は約三億六千万円であったということでございます。
 また、ネプチューン号の座礁事故でございますが、こちらは二〇一六年の五月に同船舶が兵庫県南あわじ市で座礁したものでございます。
 こちらの事案につきましても、船舶所有者が兵庫県からの座礁船撤去命令に従わず、船体が放置されたままになっておりましたため、二〇一八年十月から十一月にかけて、兵庫県の負担で座礁船撤去が実施されたということでございまして、座礁船撤去に要した費用は約一億七千万円であったということでございます。
 なお、両事案ともに、保険会社が保険契約違反による免責を主張したために、保険金は支払われておらないということでございます。
○清水委員 いずれの事故も、今述べられましたように、保険契約上に瑕疵があるということで保険金が支払われなかったと。今お話しいただきましたけれども、青森県の方は三億六千万円、そして兵庫県淡路島の方で起こった事故につきましては一億七千万円、これらを地方公共団体がいわば費用を負担したということであります。
 それで、確認するんですが、今回、この二つの国際条約に締結し、本法案を改正するわけなんですが、これらの損害、いわゆる青森県の事故と兵庫県の事故ですね、保険会社に対して遡及して請求するということはできるんでしょうか。
○水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。
 燃料油汚染損害の民事責任条約及び難破物除去ナイロビ条約におきましては、条約の効果が発生する前に発生した事案に対して、条約の効果をさかのぼって適用させる規定はございません。
 したがいまして、この法案におきましても、施行日前に発生した事案について、本法案の規定をさかのぼって適用するということにはしておりません。
○清水委員 さかのぼって請求することはできないと。
 逆を返して言いますと、先んじて条約に批准していたのであれば、この青森県の事故も、それから兵庫県の事故も、直接保険会社に請求することができたということだと思うんですが、ちなみに、燃料油条約そして難破物除去条約、この二つの国際条約の発効日はいつになっていますか。
○水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。
 燃料油汚染損害の民事責任条約につきましては、二〇〇一年三月二十三日に採択をされまして、二〇〇八年十一月二十一日に発効いたしました。
 また、難破物除去ナイロビ条約につきましては、二〇〇七年五月十八日に採択され、二〇一五年四月十四日に発効いたしました。
○清水委員 今のではっきりしたんですけれども、燃料油条約が発効したのが二〇〇八年、燃料油漏れの青森県の事故が二〇一三年ということですから、条約発効の後に起きた事故である。そして、兵庫県の事故につきましても、難破船の、難破物の除去の問題なんですが、二〇一五年にこのナイロビ条約が発効している。そして、兵庫県の事故は二〇一六年であった。先ほど質疑しましたように、遡及して請求することはできない。
 このことを鑑みれば、たらればになるかもわかりませんが、もっと早くこの二つの条約に批准していれば、今回の青森県の事故と兵庫県の事故、本来、船舶所有者が持っている賠償するべき責任、あるいは保険会社が支払うべき費用、こういうものを青森県や兵庫県の方々の税金によって肩がわりせずに済んだのではなかったのか。
 ですから、もっと早くこの二つの条約に批准するべきではなかったのかということについて、国土交通大臣の認識を伺いたいと思います。
○石井国務大臣 我が国におきましては、一定の外国船舶に対しまして、損害に対する賠償が行われるよう、我が国独自の措置として、保険の加入を義務づけてまいりました。その結果、座礁船放置事案は大幅に減少してきたところであります。
 一方、近年、アンファン号やネプチューン号のように、保険契約違反を理由とした保険会社による保険金の支払い拒否により、結果として損害に対する賠償がなされない事例が出てきたところであります。
 こうした事例が出てきたからこそ、我が国におきまして、両条約を国内法制化する必要性を関係業界とともに議論する機運が醸成されたものと考えております。
 今後、同様の事例が生じた場合でも、被害者の保護が図られるよう、本法改正により導入される措置の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
○清水委員 今、石井大臣の御答弁は、こうした事故が起きたからこそ、その必要性を鑑みて、今回二つの条約に締結し、国内法を整備するというお話でありました。
 ただ、やはり大事なことは、起こってからではなくて、事前に必要な手だてをとっておくことではないのかなというふうに思うんですね。
 例えば、これは海上保安庁の資料なんですが、去年一年間に、二〇一八年に日本周辺海域で起きた海洋汚染件数が四百十四件もあるんですね。そのうち油による汚染が二百八十三件ですから、約七割がいわゆる油による汚染事故であるということがわかっております。
 また、これは少し前の数字になりますけれども、二〇一〇年から二〇一四年に世界の海で起こりました海難事故、これによって座礁、沈没した船舶の件数が二千十七件あるということなんですね。そのうち、日本近海においては八十五件起きているわけなんです。
 つまり、今度の二つの国際条約、いわゆる燃料油条約や難破物除去条約が発効した時点においても、こうした油流出汚染事件やあるいは難破物除去にかかわる、地方公共団体やあるいは漁業関係者が何らかの理由で負担した費用が支払われないというようなことは十分に予測されたというふうに考えるわけでございます。
 やはり、様子見の態度でよかったのかなと。確かに、現在の締約国に比べると、発効した時点においてはそれほど加盟国が広がっていなかったというようなこともありますし、この間説明を受けたところによりますと、例えば中小の船舶事業者については、経営体力の問題があるので、一律に保険加入の義務も生まれるわけですから、そうした理解が得られるのかというような御説明もありましたけれども、日本は、この間言われていますように、四面を海に囲まれた海洋立国でありますし、貿易についても船舶によるものが圧倒的多数であるということであるならば、やはり、様子見ではなく、必要な条約については率先して例えば締約し、批准し、そして、まだ様子見をしている周りの国々に対して積極的に条約への加盟であるとか批准を呼びかけていく、そういう主体性が私は求められているというふうに思いますので、その点についてぜひ指摘をしておきたいというふうに思います。
 続きまして伺いたいのは、外国船舶油等防除対策補助金、これについて伺います。
 この補助金が創設された経過、概要、そして補助金の交付実績について教えていただけるでしょうか。
○水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。
 外国船舶油等防除対策費補助金の制度でございますが、外国船舶の所有者が地方自治体に対し燃料油による汚染損害等の賠償を行わなかったケースが問題になりましたことから、二〇〇四年に設けられた補助金ということでございます。
 この補助金は、外国船舶の座礁などによりまして燃料油が排出された際に、地方自治体が行う油防除作業の費用が一定以上の額であった場合に、その二分の一までを予算の範囲内で補助するものでございます。
 この補助金でございますけれども、これまで三回の交付実績がございまして、合計約八億円を補助してきておるところでございます。
○清水委員 もう少し詳しく聞かせていただきたいんです。
 今お話がありましたように、外国船舶が座礁などして油などが漏れてしまう、そういうときに地方公共団体が行う油防除作業の費用の一部について補助する制度だということでありまして、ただ、採択基準というのがあると思うんですが、これは幾らの金額以上のものというふうになっているか、その点についてお答えいただけますか。
○水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。
 この補助金の具体的な制度の内容、特に採択基準についてお尋ねがございました。
 こちらの補助金でございますけれども、補助先がまず地方公共団体ということでございまして、採択基準は二千万円以上の場合が対象になるということでございます。補助率が二分の一ということになっております。
○清水委員 つまり、油が流出したことによってその防除作業に二千万以上かかった場合、地方公共団体が負担した場合、その二分の一について補助するというのが採択基準だということが確認されました。
 それで、先ほど質疑をさせていただきました青森県でのアンファン八号の事件と、それから淡路島での座礁事案、ネプチューン号、これについていろいろ調べたんですが、淡路島の座礁したタイ船籍の台船ですが、これは難破物の除去ということで約一億七千万円かかっているということで、油の除去については確認されていないということなんですね。
 一方で、青森県深浦沖での座礁、燃料油汚染事案、アンファン八号の方は、先ほど、かかった費用が約三億六千万円、こういうふうにおっしゃっておられましたが、その三億六千万円のうち、残骸撤去費用にかかった費用と、そして、こちらの方は油が流出しておりますので、油防除等の費用、この内訳というのをつかんでおられましたら教えていただきたいんですが、わかりますでしょうか。
○水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。
 御指摘のアンファン八号の事案につきましては、これは、撤去等に要した費用のうち、油防除などに要した費用と船骸撤去費用に要した費用、それぞれがあるというふうに理解をしております。私どもの手元にあります情報によりますと、油防除等の費用で約五千万円程度のコストがかかっているというふうに承知をしております。
○清水委員 つまり、この外国船舶油等防除対策補助金、先ほどから採択基準について質疑させていただいたんですが、まさにこの青森県のアンファン八号の場合は、油防除対策費用が、その採択基準に適合する二千万円以上である、約五千万円ということで今御答弁があったわけなんですが、では、この青森県深浦沖座礁、燃料油汚染事案、このアンファン八号について青森県が支払った、費用負担した油防除等の費用、座礁の方はともかく、この五千万円については、今申し上げました外国船舶油等防除対策補助金のいわゆる補助対象となり得る可能性があるということでよろしいでしょうか。
○水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。
 委員御指摘のとおり、この青森県の事案につきましては補助金の対象になり得るということだと考えておりますけれども、実際には、この補助金の活用に関しましては、青森県からは申請が行われなかったということでございます。
○清水委員 先ほど、やはりこの二つの条約を批准するまでは遡及して支払われないということもあったんですが、一方で、こうした補助金がある。そして、今局長、御答弁いただきましたように、まだ青森県からはそういう申請がないということなんですが、ぜひ周知してあげていただきたいと思うんですよ。そうやってせっかく使える可能性があるというわけですから、相談にも乗っていただきまして、青森県の考えだとか要望だとか、そういうものも考えていただき、これは支払われるということになれば大変助かる、そういう案件だというふうに思いますので、ひとつよろしくお願いしたいというふうに思います。
 やはり、今申し上げました外国船舶油等防除対策費補助金というのは、今回の法改正とは別途必要なものだというふうに思うんですね。
 といいますのは、今回、さまざまな外国船籍、あるいは内航船舶にも保険加入の義務づけをするわけですけれども、その保険契約の金額とか内容というのはまちまちだと思うんですよね。例えばそれは船舶の規模によったりするわけで、これまでの保険金の支払いしかできませんという上限なども設定される可能性があるわけです。
 しかし、実際、その油の防除対策に係る費用が、保険金額を超えて費用負担をしなければならないという地方公共団体や漁業関係者などが生まれた場合には、やはりこうした補助金の制度なども活用して、できるだけ被害を低減させていくということのためにしっかりと活用していただきたいと思いますし、また、地方公共団体などの関係者の皆さんにもこういう制度があるということを周知していただくということを要望しておきたいというふうに思います。
 次に、海上の安全について質問をさせていただきたいと思います。
 昨年九月四日に台風二十一号が大阪を襲いました。関西空港島の連絡橋に油タンカー宝運丸が衝突するという大惨事が発生いたしました。運輸安全委員会が既にこの事故について報告書を公表しているんですが、この事故の概要についてお聞かせいただけるでしょうか。
○岩並政府参考人 お答えいたします。
 平成三十年九月四日、委員御指摘の台風二十一号が大阪湾付近を通過した際、関西国際空港連絡橋の南方約一マイルの場所に荒天避泊しておりました油タンカー宝運丸が強風の影響で走錨をいたしました。走錨といいますのは、強風などによりまして船がいかりを引きずりながら流されることでございます。
 この走錨の結果、同船が連絡橋に衝突し、船舶交通の安全が阻害されるとともに、同空港へのアクセスが制限されるなどの影響が出たものでございます。
○清水委員 関西空港島から一マイル、約一・八キロのところに錨泊していた。錨泊というのは、いかりをおろして停泊していたということですが、それが台風によって走錨する。走錨というのは、いかりをおろした状況のまま船が流されるということをいうのだと思うんですが、そのことによって宝運丸が連絡橋に衝突をしたということであります。
 運輸安全委員会が、ことし四月に、油タンカー宝運丸衝突事故の報告書を出しておられます。ここでは事故原因についてどのように分析されているでしょうか。
○篠部政府参考人 お答え申し上げます。
 運輸安全委員会は、平成三十年九月四日に発生した油タンカー宝運丸衝突事故の報告書を平成三十一年四月二十五日に公表いたしました。
 報告書では、原因について、台風第二十一号が接近し、海上台風警報が発表されていた状況下において、宝運丸が、一、関空連絡橋が北方約一マイルの距離にある錨地に錨泊したこと、二、二つのいかりのうち一つのいかりのみを使用した単錨泊を続けたこと、三、台風接近により風が強まった際に、エンジンを使用した推進力を停止した状態にし続けたことから、本船を制御する距離的な余裕がない状況で圧流され、連絡橋に衝突したものと考えられるとしております。
 このうち、一点目に申し上げた錨泊場所に関する船長の判断については、台風が実際の進路とは逆側の錨地東側を通過し、風が比較的強くならない側である左半円側に入ると思っていたこと、台風の進行速度が速く、長時間にわたって強い風が吹くことはないと思っていたこと、次の積み荷役が阪神港堺泉北区で行われる予定であったこと、及び、関空島から三マイル以内の海域を避けて錨泊することを注意喚起していた海上保安庁作成のリーフレットを知らなかったこと等によるものと考えられるとしております。
 以上です。
○清水委員 ありがとうございます。
 今最後に述べられた、関空島から三マイル以内の海域を避けて錨泊することを呼びかけていた海上保安庁のリーフレット、今お手元に配付しております資料の一でございます。これが「走錨海難を防止しよう!」という海上保安庁のリーフなんですね。
 これは、実は二〇一一年度から使用されているものでありまして、走錨防止五カ条の一番目に、関空島の陸岸から三マイル、これは約五・五キロメートルのことだと思うんですが、離した場所に錨泊してくださいと。このことについて船長が知らなかったということなんですが、これは、船長だけではなくて、運輸安全委員会の報告書を読みますと、管理責任者、運航管理者あるいは代理店担当者、みんな知らなかったということなんですよね。
 ですから、二〇一一年から使用しているこの呼びかけリーフ、三マイル離したところに泊めてください、このことがなぜ周知されていなかったのか。お答えいただけるでしょうか、海上保安庁。
○岩並政府参考人 お答えいたします。
 海上保安庁におきましては、現在、先ほど委員御指摘のように、リーフレット等を用いまして、機会あるごとに、関空島の陸岸から原則として三マイル以上離れた場所で錨泊することを、海事関係者、関係団体等を通じまして個別事業者に注意喚起をしていたところでございます。
 また、事故当日におきましても、台風接近に伴う走錨に注意するよう、宝運丸を含む錨泊船舶に対しまして、大阪湾海上交通センター及び第五管区海上保安本部から注意情報を発出しております。
 これらの対応にもかかわらず、今回事故が発生しましたことから、外部有識者による検討会の提言を踏まえまして、荒天時の航行を原則禁止する規制区域を設定したところでございます。
 この新たな規制につきまして、個別の船舶運航者等にまで周知が行き渡るよう徹底してまいりたいと考えております。
○清水委員 今、九月四日の台風二十一号のときに、いわゆる三マイル以内に錨泊しないようにということで情報を発出していたということなんですが、資料の二をごらんください。
 資料の二は、台風二十一号が来た九月四日、左側の図は、関空島から三マイルの線ということで、この中に錨泊船が十三隻確認されているわけなんですよね、あのリーフレットの呼びかけにもかかわらず。
 今、海上保安庁長官が、海上交通センターから、出てくださいと情報を発信したということなんですが、発出したにもかかわらず、じゃ、この十三隻は移動しなかったということですか。そこを確認しておきたい。
○岩並政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、海上交通センターから走錨に関する注意情報を発出しておりましたけれども、この宝運丸につきましては三マイル以内から移動しなかったということでございます。
○清水委員 最後に質問するんですけれども、この同じ資料の二を見ていただきますと、その後やってくる台風二十四号、これは九月三十日のものですが、現場における強力な指導を実施したところ、見事に、関空島三マイル以内の状況を見ますと、錨泊船はゼロなわけですよ。ですから、九月四日の台風二十一号の時点でこのような指導を行っていれば、この油タンカー宝運丸の事故は防ぐことができたんじゃないか。
 ですから、この資料にありますように、自動船舶識別装置、AISによって三マイル以内に錨泊していることを確認しているわけですから、どうしてそれができなかったのか、この点について最後お答えいただき、私の質問を終わりたいと思います。
○岩並政府参考人 お答えいたします。
 今回の事故を踏まえまして、事故の再発防止の観点から、外部有識者による検討会の提言を踏まえまして、本年一月末より、関西国際空港周辺海域におきまして、海上交通安全法に基づく荒天時の航行制限の運用を開始しております。
 この運用を適切に行うことによりまして、船舶交通の安全確保に努めてまいる所存でございます。
○清水委員 再発防止を強く求めて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

 

配布資料 2019051501 2019051502

動画 https://youtu.be/oDoXgJGUpP8