


清水 本日はお忙しい中、ありがとうございます。
品川 1月に共産党の大会がありますね。あの(大会)決議案は綿密によく書かれていますね。
清水 お読みいただいたんですね!
品川 たとえば歴史の分析一つとっても、「満州事変」から始まった15年戦争という書き方ではなく、日本帝国主義時代の朝鮮に対する植民地政策も問題にしています。はっきりとその前の日清・日露の戦争から日本のあり方を問うています。その見方でないとアジアの問題は論議できないんですね。政党として、これほど的確に問題提起しておられることに全面的に賛成します。
清水 ありがとうございます。 昨年夏の総選挙では国民が自公政権を退場させました。あの選挙結果について品川さんはどのように見ておられますか?
品川 経済界としては小選挙区制、保守二党の交代を前提としてやっていましたが、これまで自民党に深入りしていたもんだから、財界のトップが対応の仕方に混乱していることは事実です。日本の資本主義は、いままで社会主義や中道左派の下にたったことがなかった。ヨーロッパでは労働党や社民党、フランスのシラク時代なんかもいわゆる左派政権下にあっても、資本主義としてやるしたたかさもあり、慣れている部分がある。ところが日本の場合は初めてこういう格好になり、パナソニックだとかトヨタなんかは、自分の会社の労働組合出身の人が大臣になった。慌てるのも無理ないんですね。
しかし民主党があの308議席を自分の力で取れたと思っていたらこれは大間違いです。ただ渡辺治さん(一橋大学教授)も指摘しておられますが、自民党と民主党を合わせた得票数は約7割で前回と変わらない。自公政権退陣をと国民をかきたてた共産党と社民党の力は大きかったわけですが、そっちにいかず民主党にいってしまった。この7割の壁をどうくずすかがこれからの大きな問題だと思います。
沖縄の問題は日本の問題
清水 政権が発足して約4カ月がたちましたが、民主党政権に対して、どうもちょっとおかしいなと不安と批判の声も出始めています。たとえば後期高齢者医療制度の問題にしても沖縄の普天間基他の問題にしてもずいぶんぶれているんではないかと。
品川 志位さんが言われるように、沖縄の米軍基地というのは日本を守る部隊でないことははっきりしています。
清水 なぐり込み部隊ですからね。
はっきり物言う機会に
品川 総選挙で、基地建設を進めようとしていた自公の国会議員は沖縄では全滅して、県民の意思ははっきりと表われました。一方、アメリカの大統領がプラハでああいう演説をするなんて、多くのアメリカ人も夢にも思っていなかったことでしょうし、まして原爆が投下された広島・長崎に対して道義的責任があるとまで言明した。たしかにアフガンや北朝鮮の問題で、核抑止力を唱えている問題にしても、大統領になる前とかなり変わってきている点など、冷静に見ていかなければなりません。同時に日本がはっきりとアメリカに対してものを言える、言わないといけない状況に置かれていると思います。
2010年は安保(日米安全保障条約)50周年です。日本の対米従属の象徴である沖縄の基地問題を、沖縄の問題だけでなく、これからの国づくりのあり方として、日本がはっきりとものを言える絶好のチャンスが2010年だと思います。私としては85年の生涯の中で、本当にやるべき年がきたなという感じを受けています。
清水 品川さんのおっしゃる通り、基地の問題は沖縄だけでなく、大阪に住む私たちも含めて国民全体の問題だと思います。ところが大阪府の橋下徹知事は、それに逆行するような発言をして問題になっているんです。
知事が、関西空港への普天間基地移転という議論も拒否しないなどと発言したのを日本共産党の府会議員が批判しました。すると、日本はアメリカの核の傘に守ってもらっている、そのアメリカに出て行けというのは、共産党は核武装論者だと。これは一貫して戦争反対・核兵器廃絶を掲げて国民と共に運動してきた日本共産党への悪質な誹謗中傷であるだけでなく、基地返還を求め、新基地建設反対の声を上げている沖縄の人たちをも核武装論者に置き換える、許せない話だと思います。
品川 関西空港に呼ぶなんて、いったい何を言ってるのか。
関西では、米軍の飛行場といっても自分の近くにある民間の空港のように整然としたイメージしかないでしょうが、実際の軍の訓練は、たとえば軍用機の片一方がやられた時にもどう飛ぶか、どう脱出するか、三日三晩何も食べずどうやって生き延びるかというのが本当の訓練です。
死ににいくための訓練
戦闘だけが戦争ではなく、その前にどれだけ人間性がいためられるか。私も高等学校時代に鳥取の軍隊に入りましたが、最初の日に大きなショックを受けました。
軍服に着替え終わった時に非常呼集のラッパが連隊中に響き渡り、何のことか分からずに練兵場に集まると、その日の朝に入った私たち240名に向かって、3千数百名の将校や兵隊が整列しました。そして演壇に立った連隊長が、「今朝入隊した現役兵の顔をよく心に刻んで頭に置いておけ。この男たちは死にに行くんだ」という訓示をされたんです。現役兵として入隊する以上は戦死は覚悟していましたが、軍隊内部で宣告を受けた。しばらくは誰も口をきけませんでした。
その後2週間で前線に送られましたが、そのときの訓練は、たとえば等間隔に打ってある50センチメートル以上の高さの杭の上を夜に歩かされたりした。これは、枕木を伝って大黄河をわたるための訓練だったんですね。 本当の戦争、訓練とはそういうものです。沖縄でやってるのはまさにこういうことですね。いかに危険なものか、沖縄の人たちはみんな知っている。
清水 爆音を聞くだけでわかる。
品川 沖縄の県民はいままでそれを我慢してきたんです。
清水 沖縄の問題は日本の問題。2010年こそ、アメリカ言いなりの政治をただす年にしたいと思います。同時に、景気と暮らしの問題、この不況をどう打開するかが問われる年になると思うんです。
大企業の雇用責任を問う
清水 大阪は現在、失業率が7%超えていて、今春卒業する高校生の就職内定状況も非常に悪くこのままでは学校を卒業して即失業という事態が広がってしまいます。大阪は中小企業の町で人工衛星を飛ばすぐらいの技術を持っていますが、やはり仕事がなくて工場の家賃や固定費なども払えなくて厳しい。政権が変わったんだから早く景気を良くしてほしい、仕事が増えるようにしてほしいという期待も広がっています。
品川 日本国憲法9条は、戦争を国家の目ではなく人間の目で見て、人を殺すことなんてもう許されないとうたったもの。世界の宝物です。そういう憲法を持っている国が、人間の目で経済を見れないかというのが私の経済人としての最大の課題です。
政府動かすところまで
おととしの暮れから正月にかけて「年越し派遣村」が起きた。中央官庁が全部あり、国会も最高裁判所もある日比谷で、しかも厚生労働省が自分の場所の講堂まで提供せざるを得ないところまで追い込みました。
今までは中央の政治のいろんな政策にどう順応するかというのが日本の国民の生き方でした。ところが「派遣村」で、いやそうじゃない、状況は国民がつくるんだということをはっきりと突きつけたんだと思います。
清水 あれから一年たって、私たちも国会や地方政治でも緊急雇用対策など求めて頑張りましたが、大阪でも目に見えて雇用状況がよくなったということはないんです。
品川 いままでの日本の経済の仕組みは、人間の目で見るということから一番ほど遠いものでした。それこそ資本の目で見て、企業自身が買収の対象になってしまった。いままでは、おれとこは鉄を造ってるとか、板金をやってるとか、それぞれ内心誇りがありました。ところがいまは利益率しか問われなくなった。
清水 数年前から物をつくってもうけるというより、投機マネーとか会社の合併吸収、株式の売買で利益を生み出すという風潮になって、若い人たちが将来の夢はと聞かれた時、ライブドアや村上ファンドみたいにやりたいとか言ってましたからね。
品川 そうそう。
清水 財界は人件費コストを下げるために派遣労働や非正規労働が必要だと言いますが、日本の将来を考えるときに、若い人がそんな働き方でいいのかと。
弱者を苦しめないこと
品川 労働力を買うにあたっては、その人が結婚し、子どもを産み育てられる給料を出さないとだめなんです。その人の人生を買ってるわけですから。それを安けりゃ安い方がいいということ自身、はっきりいって犯罪です。
今度の不況は長いと思います。なぜいまの不況が起こったかとか、どうすれば解決するかという本は、本屋に山積みされています。だけど私は、長いこの不況で、苦しんでいる人にこれ以上の苦しみを与えないという政策をはっきりとたてるのが基本だと思います。
清水 品川さんのおっしゃるように、この不況の中でも弱者に負担を与えないようにしようと思えば、やはり体力がある大企業の皆さんに、ある程度社会的責任を果たしてもらうことが大事だと思うんです。
品川 もちろんそうです。
清水 だけどこれが一筋縄ではいかない。私たち共産党は、大企業にもう少し社会的なルールを守ってくださいと言ってるんですが、大企業に勤めている私の友人からは、共産党は大企業の批判ばかりする。大企業があるから日本がもっているのにと言われるんですね。そこのところ、どう考えたらいいでしょうか。
品川 不況の苦しさを大企業だけが逃れて、他の人にかぶせるやり方は社会的にも成り立ちません。
今度のは世界的な不況ですから、どの国もいろんな形で社会問題も経済問題も財政問題も抱えるでしょうが、弱者に及ぼさないというのが一番の基本です。それは何も大企業を敵視するのではない。結婚できない賃金を渡して、派遣労働のように在庫品扱いにして雇用期間を一方的に切って、切られたら家も失うなんてことは許せませんよ、それは一番やっちゃいけないことですよと。
消費税増税など筋違い
大企業は史上最高の利益をあげてきました。今度はいままでためこんできたものを吐き出してやっていくのが企業の責任であり、そうさせるのが国です。それを法人税を下げよとか、消費税を上げよとか求めるのは筋違いもはなはだしい。
清水 消費税はまさに弱者いじめですから。
品川 「小さな政府」とかよく言いますが、日本の政府は決して大きな政府とは思いません。ところがただ一つ、ものすごく大きい要素があります。それは国債、政府の借金が世界最大値なんですね。
清水 よく破産しないなあと言われますよね。
品川 しかしそれは何のために、誰から借りているかというと、国民の家計部分からお金を吸い上げて、企業部門に渡すために国債を発行しているんですね。国民の銀行預金や郵便貯金が全部国債になっている。もらった側の企業金融部門がお金を返すのが当たり前。それがいやなために消費税の引き上げを要求してきている。問題ははっきりとしています。経済政策というのは、大企業に対して、あんたたちが返しなさいというのが当たり前の話なんてすね。
それともう一つは、規制緩和の問題です。一連の規制緩和は、労働者派遣法をはじめとして大企業がもっと自由に稼げるための規制緩和でした。それも転換する政策が必要なんです。
清水 日本の大企業経営者の皆さんが、品川さんのような感覚で臨んでくださったらいいんですが(笑い)。
品川 それはありえない話ですが(爆笑)、ただみんな反省期に入っていることは確かです。いままでのやり方でどこが悪いかと言う人は竹中(平蔵)さんぐらいでしょう。小渕内閣の時のブレーンだった中谷巌さんは懺悔の書まで出している。
そういう意味では、正論をはっきりとまとめてはくということが大事になっている時期だと思います。私自身、長生きしていろんな情勢を見てきましたが、大きな目でみると、これほど変わるとは想像できないぐらいの大きな変化をしていっているわけです。
運動しがいのある時期に
品川 日本の場合は戦争放棄の憲法9条と文化的な生活を保障せよという25条を持っている。その両方の問題がいま出てきている。基地の問題、不況の中でこれ以上苦しみを与えませんという経済政策を、大企業の圧力を受けている民主党が出せるかどうか。
出せなかったら国民はおとなしく、やむを得ませんとは思いませんよ。そうはっきり言う時代がきたなと。
日本の歴史を見ても、大きな新年を迎えたという感じがします。そして、一切の妥協を排して、国民の立場からものを言い続けてきた健全野党として、日本共産党の意見をいっぺん本気で聞いてみなさいと。共産党 は極めて的確に情勢をつかんでおられる。あとは、一つ一つ国民の側に立って、国民の怒りをまとめる役割を果たしていただけたらと思います。
清水 ありがとうございます。私たちもこれまであまりかかわりの薄かった方や、党と縁遠いといわれてきた方々も合めて、平和の問題や経済をどう立て直すかという問題について、胸襟を開いてお話をさせていただいて、私達の政策を一人でも多くの方にお伝えしていきたいと思っています。
品川 この部屋と同じフロアに経済同友会の事務所もあります。ここはいわば日本財界の牙城です。私自身、こういう場所で、はっきりとこういうお話をすべき時期だと思っています。もちろん私の発言に対して異論を持つ人もいますが、たとえばいま、一部上場企業の社長だけで「九条の会」をつくろうという動きもある。中日ドラゴンズの社長自身も球団の「九条の会」の発起人として公然とやっていて、それがファンの会にまで 広がっています。
清水 戦争で野球界でも大勢の選手をなくしてます。平和であってこそプロ野球もスポーツも楽しめる。
品川 ファンの中には大企業の社員もいる。従業員が1万とか2万いるような会社の社長が九条の会を結成したら、(清水「さらに広がる」)。
決して悲観的な状況じゃなくて、むしろこれほど運動のしがいのある時期は日本でも、世界でもまたとない。一つ変わり出したら次々に変えられます。それをどういう形でやるか。清水さんに本当にお願いしたいし、私も今年もう1年頑張りたいと思っています。
清水 2010年はわくわくする情勢ですし、品川さんがおっしゃったように、国民一人ひとりが立ち上がる状況をつくり出す年に、ぜひしていきたいと思います。国民が主人公になる政治めざして、私も全力尽くして頑張ります。本日は本当にありがとうございました。
しながわ・まさじ 1924年兵庫県神戸市生まれ。 44年、 徴兵で露国戦線へ。 東京大学法学部卒。 日本興亜損保 (旧日本火災) の社長、 会長、 経済同友会副代表幹事、 専務理事を歴任し、 現在、 同終身幹事。 国際開発センター会長。 全国革新懇代表世話人。 著書は、 『戦争のほんとうの怖さを知る財界人の直言』 (新日本出版社)、 『9条がつくる脱アメリカ型国家 財界リーダーの提言』 (青灯社) ほか。
<大阪民主新報 記事、写真より>
